手紙

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

犯罪者の兄とその兄から手紙が来る弟の生活を描いた本だ。
兄の犯罪によって、周囲から無言の圧力を受け最初卑屈になっていた弟。
しかし、高卒後に働き始めた会社でであった人がきっかけとなり、大学へのスクーリングの開始。
そして、大学での音楽を知る友達との出会いが彼自身を変えていく。
しかし、デビューに伴って犯罪者の弟という事実は重くのしかかる。
結局音楽もあきらめる事に。
そして、知り合った恋人とも兄の事があり結果的に別れる事に。
それでも、ついに差別を受け入れ、前向きに生きようとする。
その懸命さ。
それが伝わってきて感動してきた。
でも、生まれた子供にまで犯罪者の弟であるという影響が出て、結局は差別を受け入れることさえ出来ない状況になる。
だから、犯罪者の家族ということを隠して生活することを決意する。
次々に困難が訪れ、それに悩まされていく。
手紙は一ヶ月に一度届いていたが、それに対して弟を取り巻く環境を書き、兄弟の縁を切ることを決意。
手紙は弟だけではなく、被害者の遺族にも届いていたことを知る。
その遺族もそのことで悩んでいた。
犯罪者、その家族、被害者の遺族。
その家族を中心に良く描いていると思った。
最後は、音楽で決着をつけるために兄が収容されている刑務所で歌を歌うことになる。
小説を読んでいて久しぶりにカッコいいと思えた。